親が亡くなり不動産を相続しました。すぐに売ることはできますか?
不動産の売却で特に気をつけたいのは権利関係です。その不動産を誰が所有しているのかが重要になります。「すぐに売ることができるか?」という問いに対する答えは“Yes”でもあり“No”でもあります。親御さんから相続した不動産が自分の名義ならすぐに売れます。しかし、名義が書き変わっていないとしたら、ちょっと大変かもしれません。
遺産分割協議と相続登記が必要
相続の手続きにはなにかと時間がかかります。そして、兄弟が多いと必ずと言っていいほど、もめます。いわゆる“争続”です。しかも、何億、何十億といった超高額な相続案件より、5,000万円以下の方がもめて裁判沙汰になるケースが割合として高い、という統計結果があるようです。
「私は1,500万円だ」「俺は同居して面倒を見ていたんだから2,500万円貰う権利があるはず」「いや、遺言ではこうなっている」などなど、兄弟が主張し合い、醜い争いを繰り広げることも珍しくありません。そんなテレビドラマに出てくるような世界がリアルに展開されるさまを、実際に私も目にしてきました。
不動産の売却にあたっては、所有者全員の意向が明確である必要があります。売ろうと思って不動産登記簿謄本を取り寄せたところ、数十年も昔に登記されたまま所有者が変更されていなかったり、遠方に住む多数の兄弟と共同名義になっていることが明らかになることも珍しくありません。
所有権を持つ全員に連絡を取り、同意を得なければ不動産の売却はできません。そのために長い時間と費用が発生してしまう場合があるのです。
親御さんが亡くなった後、まず必要なのは相続人が何人いるのかを調べることです。亡くなった親御さんに離婚歴がある場合、前妻との間にも子供がいるケースがあります。また、認知された非嫡出子がいないとも限りません。戸籍を取り寄せてしっかりと調べなければいけないので大変です。この作業に3カ月以上要してしまうことはざらにあります。
相続人が明らかになった後、行うのが遺産分割協議です。相続人が話し合い、それぞれの割り当てを確定。そして、不動産の名義を相続人に変更する「相続登記」を行います。相続した不動産を売却する場合、遺産分割協議で相続人全員の意思を統一することが欠かせません。
公的な遺言書を遺してもらうのが最善の手段
前述のように、相続登記が完了していないと相続した不動産を売りに出すことはできません。したがって、遺産分割協議と相続登記を行う前に不動産会社に相談しても、「(相続した不動産を)売りに出してお客様が見つかっても契約ができません」と言われてしまうはずです。
そのため、たとえば私たちが同様の相談を受けた場合は、まず司法書士を紹介しています。そして、遺産分割協議と相続登記が完了する段階で、売却についての相談をスタートするようご案内しています。
加えて、よくご質問いただくのが「遺言書」についてです。遺言書は、法的に効力のあるものなら認められることになっています。しかし、有効な書き方がなされている遺言書は少ないのが実際のところです。
遺言書には主に「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があります。それぞれに決められた様式があり、様式の条件を満たしていることが重要です。
さらに、遺言書には「勝手に開封してはいけない」など、様式によってさまざまな“しばり”があります。言いかえれば、普通の手紙のような体裁では、遺言書として法的な効力は発揮できないわけです。遺言に関しては、弁護士や司法書士、行政書士、税理士など、国家資格を持つ専門家に相談したほうがいいでしょう。
親御さんが存命のうちに相続に関する話を進めるのは難しいことも多いと思います。しかし、不動産をはじめとして、まとまった金額になる資産をお持ちなら、後々のことを考え、話し合っておくべきです。
また、相続した不動産を売却する場合、さまざまな税金の優遇措置が受けられる可能性があります。不動産取引の知識に加えて、税金に関する知識も豊富な不動産会社の担当者に依頼するのがお勧めです。
弊社ではセカンドオピニオンの相談を無料で承っています。現状に疑問や不満を感じている売主様、ぜひ一度ご相談ください。